365日~生きる術を見つける3時間半~
2020.04.08
寮からグランドまでの距離・・・2キロ
影と気配に怯えながらその距離を疾風のごとく走り抜け
高台にそびえたつ仮想甲子園球場
バックスクリーン横から入り、練習の準備へと差し掛かる
練習メニューは一見オーソドックス
全体アップ⇒キャッチボール⇒トスバッティング⇒シートノック⇒5カ所バッティング
がレギュラーメニュー
時にバリューセットで最後にベースランニングor4ヵ所ノックがトッピングで加わります
もちろんポテトかナゲットを選べるウキウキ度はなく
どちらが来ても地獄のバリューセットになっております
スマイルは無料ではなく無条件で地獄へ真っ逆さまとなっております
“一見”が意味するその奥には隠れた罠が多数はられている
まず、全体アップ
高校野球恒例の『イチ、イチ、・・・』的な足並みそろえる掛け声ランニングはいいとして
その後の柔軟体操
もちろんペアで行うこの儀式
同学年と組めなかったらさぁ大変
椅子取りゲームレベルで同学年を探しペアを組むわけだが
逃したその先に待つお方、先輩のレベルによっては練習開始から地獄へと・・・
そこで手にした片道切符
キャッチボール、トスバッティングのペアへとつながり
その先に待つのは野球人生が終わりかねないイップスという終着駅
シートノックではボール回しから緊張感で溢れ
構えられたグローブはその位置から微動だにせず
投げた瞬間“やっちまった”とボールを追い越す勢いで拾いに行く姿まさに瞬間移動
ゴロを捌いた先に待つ甲子園のヒーローたちが構えるグローブがやけに小さく見えた16の春
後1年早けりゃ盗んだバイクで逃げていたに違いない
なんとか半分のメニューがすぎ
そこで待つのは声量選手権
バッティング練習中、外野で繰り広げられるその大会でのアピールが
夜の“点呼タイム”でのポイントに繋がってくる
喉が強い奴ほど嗄れずらく、弱い奴ほど嗄れ易い
強い奴の方が大声出るのになんと不条理な審査基準
その後のバリューセットでは体力的な辛さしかないのが幸せだった不思議な気持ち
ただし、この仮想甲子園球場で“野球”が出来るのは1軍のみ
A~Cランクに分けられた20~25人の精鋭のみ
それ以外はサポート&サブグランドでの永遠ノック
どちらの世界でも地獄は待つ
プレイしてもサポートしても
地獄は待つ
まだ入部して、入寮して間もないこの時期に
同級生であるのはライバル心
見えているのは自分だけ
助け合う余裕のチカラもなければ視野もない
グランドでもまだ仲間と呼べる存在はいない時期
16:00~19:30
たかだか3時間半の練習時間
メニューもシンプル
なのになんでだろう
時間が永遠に、メニューが複雑に
長く、難しく感じたあの頃
とにかく6時間目終わりのチャイムが嫌いでしょうがなかった春
そこから始まった4月
練習後の寮生活がさらなる追い込みをかけてくる
もはやバイクを盗むべきである